『銀河系大戦史』『猫屋版・銀英伝』に関する談話室
犯罪の裏に女あり、戦争の影には経済あり……ですな。
>> G朝の政治体制――更にはフェザーン、同盟を含む、既存の国際システ
>>ムそのものを解体し、統一された市場を夢想した企業家がいたとしたら…
>>…?
>>「社長、宇宙を手にお入れください……」「専務〜っ!」ちょっとヤかも
なるほど、シルクロードがモンゴル帝国を必然化したという説の銀河系宇宙版
ですね。経済が政治の枠を簡単に踏み越えてしまい、経済が政治を動かし、さ
らに政治のもっとも野蛮な手段としての戦争を発動させるというのは歴史的な
事実かも知れません。
わたしは、貴族と貴族の特権に結びついた独占資本と、自由惑星同盟の軍産複
合体が、フェザーン経由で意図しない連携を結び、戦争による利益独占を行っ
ていた。さらに進んで、戦争を常態化させていたのではないかという説を採り
ます。第二次大戦直後に、合衆国の政治家だったか誰かが『合衆国は今後も戦
争経済を続けなければならない』という言葉を口にしたと聞きます。常に戦争
を行える状態、或いは行う状態に国家を置き、膨大な軍需産業に税金を流し込
むことで、国家の経済力を維持していくというものです。帝国や自由惑星同盟
は政治的には対立していますが、その経済システムそのものはこの合衆国の経
済システムに酷似していたのではないかと類推するしだいです。
レポートありがとうございます……って何のレポートだろう?
【G王朝の貴族】
G王朝が封建制であって、いわゆる郡県制ではないというご説は納得できます。
G王朝における軍事力配分は、いわゆる辺境には治安維持のための比較的薄い
兵力が配置され、要所要所に緊急時に現場に急行する有力な機動部隊を配した、
ローマ帝国型のそれだったのではないかと想像しています。この際、治安維持
に当たる兵力が貴族の私兵であり、むしろ、この目的で私兵を持つことを義務
づけられていたと解釈したほうがすっきりしますね。だから、有力貴族配下の
指揮官たちが帝国軍の階級を与えられていたのだろうと。リップシュタット戦
役末期になってファーレンハイトたちとB公たちが対立関係になったのも、中
央の軍事官僚として世に出たファーレンハイトと、私兵集団の長としてのB公
とが対立したとも見て取れます。
当初、貴族は特権と富(つまり免税権を初めとする優遇措置)を分かち与えられ、
私兵をもって帝国領の治安維持にあたるべき義務を与えられていた。しかし、
時を経て帝室と貴族の勢力逆転が起こり、私兵を養う義務は私兵を擁して、領
地の治外法権を確保する特権に変じていったのだ、と解釈しています。
<<多分、続く>>
>とすると、キルヒアイスが「いいかげんにしろ、この潰れ大福」とか言って、
知る人ぞ知る「マザー・ジーク」……か(ちゅどーん!)
従って、ローエングラム朝の歴史的意義とは――
* まぁ、個人的にはL朝体制下の銀河は、いささか政治的多様性に欠けるた
*め、100〜200年単位では必ずしも安定性に不安なしではないと見ていたり
*しますが(^-^A
とりあえず、この後は自分の原稿に取りかからないと、さずがにまずいので
レスは遅れると思います(爆)
有明コミティアには行くつもりですので、その場でこの話の続きはできると
思いますが、テキスト化についてはしばらくお待ちください(^-^A
こういう議論は、なるべくテキスト化して残しておきたいとは思うんですけ
どね。
>恐怖のキャスティング(@No.76)
とすると、キルヒアイスが「いいかげんにしろ、この潰れ大福」とか言って、
ラインハルトの顔にブーツの底をめりこませるんですな(核爆)
……やっぱりやめた方がいいかも(^-^;;
下記のような状況の中、ラインハルトが歴史に登場します。
フェザーン併合から同盟領征服までを含む「神々の黄昏」作戦が、ラインハ
ルト側、支持層側どちらが主として求めたものかは不明ですが、実体経済とし
て既に汎銀河規模の市場経済が存在している以上、それに対する有効な管理・
調整機構としての統一政体を望む声は、潜在的にあったかと思われます。
また「神々の黄昏」作戦において、汎銀河規模で活動するローエングラム朝
(以下L朝)支持派の企業家達が、フェザーン及び同盟領である種の宣撫工作
に従事した可能性も指摘されるべきかも知れません。
一般に民主主義体制は、平素からの議論の積み重ねによって体制内での中核
価値(コアバリュー)について市民各自が共有認識が形成されるため、その中
核価値への脅威には激烈な反応を示す傾向にあります。古くからの民主主義国
である米国や英国が、比較的好戦的な政策を採ることが少なくないのは、それ
も理由のひとつにあります。従って、いくら腐敗していたとはいえ、フェザー
ンや同盟市民が仮にも帝政を掲げるL朝の軍勢に、ヤン艦隊以外にはゲリラ戦
はおろかろくなサボタージュもしていないと言うのは、そうした政治学の一般
則として考えにくい。
しかしそこに、L朝支持派の企業家達が先んじて地元住民の戦後の生活や経
済活動を保証して回っていたとしたら、非常に大きな説得力を持ち得たと思う
のです。また逆に言えば、そうした宣撫工作を通じての感触から、憲法の制定
と中央及び地方議会の設置の必要を痛感し、それをラインハルトに伝えること
もあったのかも知れません。
ユリアン達、イゼルローン政府からの要求と言うより、そちらの政治的要望
に応えたことが、L朝の憲法制定に繋がったというほうが、僕的にはしっくり
きます(^-^)(引き続き「結論」へ)
下の続きです。
さてG朝の500年間を通じて、帝国領内では航路の整備、ワープ機関の改良、
通信の容量・回線数の増大、それらを主要因とする辺境領域の人口増大、更に
対同盟戦の勃発等々によって、当初より大きく産業構造を変化させたであろう
ことは想像に難くありません。
それにより汎帝国規模、更には同盟領内をも含めた汎銀河規模の経営を行う
フェザーン商人達が台頭してきます。しかし、早い段階から門閥貴族達と結託
してきた老舗の企業はともかくとして、新興の企業になればなるほど、強い自
治権を持つ貴族領に分割された市場など、経営の足枷以外の何者でもありませ
ん。なにせ各領地毎に領主の性格も違えば、営業規制や税制さえ異なっていた
可能性が強い。おまけに老舗企業と門閥貴族の結びつきが強ければ強いほど、
既得権化して新興企業は利権に割り込めない。
G朝の政治体制――更にはフェザーン、同盟を含む、既存の国際システムそ
のものを解体し、統一された市場を夢想した企業家がいたとしたら……?
「社長、宇宙を手にお入れください……」「専務〜っ!」
ちょっとヤかも(^-^A(更に続く)
なんて書くと、同盟辺りの社会科学系の大学生が無理矢理教授に買わされる
>皇帝と門閥貴族の関係
僕は猫屋さんの意見とはむしろ逆で、ゴールデンバウム朝(以下G朝)の統治
機構における必要不可欠の存在として、貴族制は存在したのではと見ています。
そのポイントは、戦力投射能力(Power Projection)です。
ローエングラム朝下では猫屋さんの『シューペア動乱』の中に「約3,000光
年を2〜2.5週間」という記述がありますが、G朝下でいくら技術が停滞してい
たとはいえ、この数字が500年間不変であったとは考えにくい。G朝発足時に
はもっと時間がかかったろうと思うのです。ましてや叛乱の第一報が帝都にも
たらされてから緊急対応艦隊を派遣するのでは、更に時間が掛かってしまう。
ルドルフは地方議会まで廃止していますから、地域レベルでの社会的ストレ
スが地元で処理されず、そのまま中央政府への不満へと転化されやすい構造を
持っています。
で、ある以上、叛乱の発生をあらかじめ想定せざる得ず、それに対してまず
初動に対応する緊急対応戦力を国内に分散配置しておくことにした。しかし、
それらの部隊が土着化し、叛乱軍の主戦力となることは避けたい。
そこで各地方軍司令官にG朝への忠誠心を確保するため、物理的・経済的には
大幅な自治権を、そして精神的には身分制度における高い位階という二つを与え、
これがG朝における銀河封建制の始まりとなったのではないか――というのが、
僕の仮説です(この項、続きます(^-^))。
そう言うことで(と、また懲りもせずに同じような書き出し)、リップシュタッ
パ△○ロ------ラインハルト(貧血起こしそうだ)
やっぱ、これは止めましょうよ(泣き)
メールでもやりとりしましたけれど……
原作では、門閥貴族が非常に有力な武力を有して、その領地に対
して半独立の自治権限を有していたかどうか……については、はっ
きりしないわけです。ルドルフは比類ない威圧感をもって人類に
君臨した専制独裁者であり、彼が取り立てた『優秀な人材』たち
と言えども皇帝に比肩できるような私兵を最初から所有できたは
ずはないのです。でも、リップシュタット戦役前後の描写を見る
限り、門閥貴族達は明らかに私兵集団を持っています。つまり、
ルドルフからフリードリヒ4世に至る500年間に、皇帝と門閥
貴族の力関係の逆転が生じたのではないかと思われるわけです。
ラインハルトがエルウィン・ヨーゼフ2世を擁しただけでは、銀
河帝国の完全な支配者とはなりおおせず、大貴族達にリップシュ
タット戦役を起こさせなければならなかったと言う事実がありま
す。フリードリヒ4世の時代、すでにG王朝そのものは銀河帝国
での求心力を失っており、単に皇帝家を打倒しただけでは新政権
の樹立にはつながらなかったのではないかということです。これ
は、単にニコライ2世の一家だけを打倒すれば政権が移動したロ
シア革命と、大政奉還だけでは完全な政権移動が起こらず、戊申
の役(やっと思い出した)から西南の役までの内戦を戦わなければ
ならなかった明治維新の違いに喩えられるのではないかと思うわ
けです。
ただ、原作には、門閥貴族と銀河帝国の政治経済、特に経済分野
での役割が述べられていません。単に膨大な私有財産を所有して
いた、とあるだけです。疑問は、B公やリッテンハイム侯のよう
な夜郎自大な考え方は、通常のビジネスでは敗者に立つべき資質
であるという点です。彼らがフェザーンの強かな連中とビジネス
で戦って勝てたとは思えないのです。義忠氏の推測のように、彼
らの内実は実はフェザーン商人によって食いつぶされ、完全な空
洞と化していたのではないかとも疑われます。もし、フェザーン
商人達と互角以上に渡り合えるくらいにしたたかなら、門閥貴族
が僅か1巻の半分くらいでラインハルトに掃滅されてしまうなど
と言うことはなかったかも知れません。
まあ、このあたりは色々と自分勝手な議論を立てられる領域と言
うことで、軽々に結論を出すこともないでしょうけれど。