『第一一艦隊の速度、〇・〇〇一二光速、秒にして三六〇〇キロ……これは星系内での限界速度に近し……』ドーリア星域会戦直前、旗艦『ヒューベリオン』ブリッジでの緊迫した光景です。が、しかし ――― 光速(真空中で約三〇万キロ毎秒)×〇・〇〇一二≒三六〇キロ毎秒……なんですけれど? 何度検算しても、Excelで計算させてみても、同じ結果。さて、銀英伝世界での恒星系内での最大速度はどう考えるべきでしょうか。三六〇〇キロ毎秒が本来想定されていた数値でしょう。本書では、一応、〇・〇一五光速(四五〇〇キロ毎秒)〜〇・〇二光速(六〇〇〇キロ毎秒)程度を速度上限(最大戦闘速度)と想定しました。 三六〇キロ毎秒では、地球から冥王星まで行くだけで二四〇日、火星まででも四〇時間強かかってしまうのです。一巻でジェシカ・エドワーズがハイネセンの隣接惑星テルヌーゼンへ帰るシーンがあります。惑星間連絡船に四〇時間も乗るんじゃ大変でしょう。やはり、飛行機並みに一〇時間以内での連絡にして欲しいです。 ただし、これはあくまで惑星と惑星の間を飛んでいる際の話です。今回もしばしば出てきますが、惑星の周回軌道に入った時の速度は、まさか秒速三六〇〇キロなんて飛んでもない(文字通りに)ものではないと考えざるを得ません。『惑星上空一万二〇〇〇キロの衛星軌道を周回』なんて設定しても、『星系内での限界速度』で飛んでいる場合、ちょっと航法を間違ったら一〇秒たらずで表面激突です。また、秒速半径数万キロの軌道をそんな速度で飛んだら、あっという間に軌道から吹っ飛ばされてどこかへ飛んでいってしまいます。 『だから慣性制御という技術が本編にもはいっているんだろうが?』 と言われれば、それまでですけれど。 いずれにしても、惑星周回速度について言えば秒速数千キロではなく、秒速数十キロのレベルということにしたいと思います。この速度でも、一時間で地球を楽々と一周以上できてしまうわけですから。 |