ヴァンフリートを舞台にするに当たり、銀英伝本編・外伝を読み直して困ったのは、イゼルローン回廊の同盟側出口宙域の地勢がよく分からないことです。ざっと書き出してみましょう。とにかく、読めば読むほど何がなんだか分からなくなってきます。ひょっとして田中先生、あまりきちんと設定せずに書かれたのではないでしょうか、などと勘ぐってしまいます。 (一)そもそもイゼルローン回廊の長さもはっきりしない。要塞から一〇光年以内にカプチュランカやティアマト星系がありそうです。で、少なくともティアマトはすでに同盟領側の星系です。ということは、イゼルローン要塞から同盟側回廊出口までは一〇光年ないことになります。要塞が回廊宙域の中央部に位置するとすれば、回廊の長さはせいぜい一五光年くらい。イゼルローン要塞から同盟首都へ行くのに約四週間。一方、アーレ・ハイネセンの脱出行は『長征一万光年』。その半分がイゼルローンからバーラトだとすれば、約五〇〇〇光年。これを四週間ということは、一日あたりの航行距離は約一八〇光年……ありゃあ……イゼルローン回廊って、ワープで一跳びなわけだ……と、まあ、これを言い出すと、一体イゼルローン回廊宙域を取り囲む『危険宙域』って何、という議論から始める羽目になりますので、この辺で止めときます。 (二)惑星カプチュランカとレグニッツアが同じ星系にあることは分かっても、その所属する星系が不明。ダゴン星系という説もあるのですが、結局よく分かりません。 (三)カプチュランカのある星系と、ダゴン、アスターテ、ティアマト星系との位置関係も不明。 (四)『汚名』の中で出てきたアルレスハイム星系は、ゲルマン系な名前からして帝国領のような気がしますが、それは不可能。帝国軍が待ち伏せしようとして失敗し、壊滅的打撃を受けています。イゼルローン要塞をバイパスして帝国領に入る能力は、この時期の同盟軍にはありません。ですからアルレスハイムは同盟側にあるはずです。 (五)ヴァンフリートはイゼルローン回廊に近すぎるという理由もあって入植されていないが、エル・ファシルは三〇〇万人もの人口がありながら帝国軍の侵攻を受けている。 (六)同盟軍は何の目的でヴァンフリート四‐二に基地を作ったのか。中継補給基地と言うけれど、何に補給するための基地なのか。なんであんな貧弱な設備しかない基地を、数万隻の帝国艦隊が楽々とやってこられるようなところに作ったのか。 |