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五. 第一部 完 とアムリッツアの食糧難

一応、『第一部 完』です。
これはTwinMilkyway(上)の後書きでも書いたことなのですが、食糧の欠乏がアムリッツアでの同盟軍大敗の主要因だとは思えない節があります。占領惑星への補給のために、同盟軍の兵站線に過大な負荷がかかったのは事実でしょう。ただ、一個艦隊一〇〇日分の行動に必要な食糧が約五〇〇万トン、体積にして一辺一〇〇メートルの立方体である、という試算がもし間違っていないとすれば、同盟軍艦隊の将兵を完全に飢餓状態に陥れるには、よほど完璧な補給戦の破壊が必須となります。銀英伝世界で、一辺一〇〇メートルの立方体と言えば、駆逐艦数隻分の容積でしかないのです。
戦史に例の少ないほど補給戦の維持に失敗した、第二次世界大戦の太平洋戦域に於ける日本軍の例をとっても、駆逐艦による強行輸送は大きな損失を出しながらも、すべてが全滅だったという訳でもありません。
水はどうかと言えば、例えば木星の衛星エウロパは氷の表面と、その内側に融けた水の海があると言われています。また、木星型惑星の大気からも水を採取できるという説もあり、宇宙での水の補給は…少なくとも銀英伝世界の技術を前提にすれば…困難とは言えません。
無論、占領惑星への補給を最優先にし、かつ各艦隊の保有食糧を限界まで供出させたために、艦隊将兵が飢餓状態に陥った、と考えられないでもないです。ただし、地球の戦史上では、食糧の供給が絶えて戦闘力を失ったのは、自らの足で歩かなければならない陸軍の兵隊さんたちでした。艦隊将兵は、腹ぺこでも、すくなくとも数十キロの装備を背負って数十キロも歩く必要はない。つまり、飢餓に近い状態イコール戦闘不能の状態とは必ずしも得ないと考えられます。
結論として、同盟軍が先に枯渇させられ、かつアムリッツアに至る戦闘で決定的な不利を被るに至ったのは戦闘資材ではないかと仮定して、この会戦を別な角度から眺めてみたしだいです。
第一部は専ら原作のディテール・アップと、第二部への伏線張りに終始しました。
第二部では、原作ではほんのあっさりと触れられただけだった皇帝フリードリヒ四世逝去にまつわるオリジナル・エピソードです。このエピソードも、長いこと書こう、書こうと暖めつつ、具体的にどのような事件が起こり、どう決着が着いていくのかまったく見えないままに放置していたものです。前作『星を仰ぐもの』でC・G・シュミットバウアーとW・リーフェンシュタールというトリックスターが手に入り、かつ第一部ではフリードリヒ四世の妄執とも言うべき側面を描くことができたことから、第二部の構想が急速にまとまりました。
第二部は、第一部と併せて印刷物にする予定ですので、当分はネットワーク掲載はしない予定です。五月かな、と思っています。

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