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グレーチェン、ある朝の朝食

グレーチェン・ヘルクスハイム少尉、ある朝の朝食です。
なんだか盛大に食べています。
厚切りのトースト三枚にバターとマーマレードをたっぷり塗り、こちらも厚切りのハムを重ねた卵ダブルのハムエッグスとマッシュ・ポテト付き大盛りのサラダ、司厨長お勧めのクラムチャウダーのカップを空け、コーヒーを二杯を飲み干し、デザートの桃のシロップ煮まで綺麗に平らげて食堂を駆け出す。男性の士官でももてあますのではないかと思われるような盛大な朝食の皿すべてをあっという間に空にしてしまったグレーチェンに、司厨長が苦笑と共にこぼした言葉は、勿論彼女の耳には届いていない。
「あんな人形さんのような美人なのに、まだ色気より食い気なのかね」
グレーチェンが聞けば、当然『食い気よ、当然でしょう』と応じただろう。完全に食欲を失っていた昨夜とは別人のように、いくらでも胃が飲み込んでくれるようだ。今日、どれほどの新たな困難が押し寄せてきても耐えられるように、身体の方がそれを要求したのだから、応じるのは当然だ、と。

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